7月10日 お天気：晴れ? 水温：31℃ 透明度：1〜2ｍ（１本目）3〜5ｍ（2本目）
【ポイント】 シャークアイランド → アオルーク
【見られたお魚】
シェベロンバラクーダ：ユメウメイロ：タカサゴ：キビナゴ：ツバメウオ：ゴマモンガラ：ハナビラクマノミ：オオクチイケカツオ：ジャワラビットフィッシュ：コガネアジ：ブチウミウシ：モヨウフグ：ヒトヅラハリセンボン：クリアクリーナシュリンプ：スザクサラサエビ：スカシモエビ：バラクーダの子供：オトヒメエビ：トウアカクマノミ：ホルトハウシ etc・・・・
我々ダイビングのインストラクターは事あるごとに魚の名前を口にする。ブリーフィングから水中に至り、そしてログ付け、さらには夜の食事の最中にも会話の中心になることがしばしばあり、ダイバーにとってどれだけ魚が身近な存在かが伺える。今でさえ、タオ島に生息する魚のほとんどを見分けることが出来るが、若手の頃はこれが非常に難しい。図鑑をなめるように見回しては、魚を覚え、水中で確認しながら必死に勉強したものだった。今でも、ごくたまにＯＷを終わった生徒などから、なぜ魚の名前が分かるんですか？と質問を受けるが、これは若手の頃の弛まぬ努力の賜なのである。
しかしながら、実は魚を知れば知るほど魚の特定というのが極めて難しい作業であると気づかされる。それは魚類分類学という一つのジャンル学問になっていることからも顕著であるが、分類学者は実際に捕まえては解剖し、ひれの数やトゲの位置など体の隅々まで完璧に調査してから種類を特定する。
当然、ダイビングの現場では視覚のみの情報によってその魚を判断しなくてはならない。千と千尋の神隠しのある場面で、千尋が湯婆婆に名前を奪われるシーンが出てくるが、やはり名前と言うものはその本人の魂に近く、名前が無くなるというのは、魂を奪われるのと同じものである気がする。魚の名前は人間の名前のそれとは趣が違い、分類上の名前であるが、見た魚に名前という魂を注入することによって、その魚がダイバーの頭の中で生きてくると筆者は考える。
本日のダイビングは6月2日以来久しぶりのシャークアイランド。最近の外洋の好調ぶりを踏まえてのポイント選択だけに、楽しみの募る展開となった。波は穏やか、日差しは強めと絶好のダイビング日和ではあったが、わずか潜行2秒、その期待は音を立てて崩れ去った。約1�僂良�者の髪には水中のヘドロが付着しながらのダイビングも、魚影の濃さは健在、8年前までウメイロモドキと呼んでいたユメウメイロが大群で登場。セダカハナアイゴそっくりのジャワラビットフィッシュ、20�檀婉瓩砲聾汽屮襦璽薀ぅ鵐疋丱薀�ーダと呼ばれたシェベロンバラクーダも大挙として群れ、突然現れる魚群に驚かされるダイビングとなった。
2本目も中々透明度の上がらないアオルーク。ブイ下滞在4日目のモヨウフグをじっくり観察、ソリハシコモンエビなのかクリアクリーナーシュリンプなのかの特定ができないお掃除エビに手をクリーニングされた後は、恐らくこれは間違いのないトウアカクマノミへ。先日発見されたモヨウフグの子供をその周りで捜索するも発見できず、本日の捜査はこれにて打ち切りとなった。
分類学者ではない我々が話す魚の名前は当然不確かではある。几帳面な方は正直納得が行かないかもしれないがしかし、あの魚はこれじゃないか？とあーだこーだと議論を交わしながら図鑑と照らし合わせ、種類を特定するのは非常に楽しい作業であり、これがダイバー冥利に尽きる瞬間なのだ。その特定範囲を広げる楽しみだけの為に4000円近くする新しい図鑑を購入してしまったりする。
そうして、この8年で手に入れた図鑑は20冊以上。この程度の図鑑だけで種類が完全特定出来たら、魚類分類学者はおまんまの食い上げである。いつも見ているギンガハゼは本当にギンガハゼか？何気ない超普通種も疑問を持って観察してみると、新しい発見が出てくるかもしれない。
現在放送中の巨人ｖｓ中日の11回戦、画面に写っているラミレスは本当にラミレスなのか？毎日いいともに出てるタモリは果たして本当のタモリなのか？魚類分類学とは全くかけ離れた話であるが、あれがギンガハゼじゃないとするとタモリも本物のタモリでない可能性が・・・・。
結論の出ない発想を繰り返し、結局ダイビング以上に疲れの溜まる35歳青年ガイド。
この先彼が、ダイビング業界を背負って立つ存在になることをこのとき彼はまだ知らない。
|